41e4df2a4631b84509adaebc6a11eed2_s マタニティ・ハラスメントとは、妊娠・出産を理由として女性が職場で受ける精神的・肉体的嫌がらせの総称です。ハラスメントは許されるべきものではなく、いわゆる男女雇用機会均等法においても、「…妊娠又は出産に関するものを理由として…解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない。」(同法第9条3項)と定められています。
 昨年秋に、妊娠中の業務負担軽減のために別部署への配置転換を申し出た結果主任の地位を免ぜられ、その後産休・育休明けに配置転換前と同部署へ復帰したにもかかわらず主任の地位に復帰できなかったことがそのような「不利益な取り扱い」にあたると訴えた裁判につき、同法に違反する取り扱いは違法無効とすべきとの最高裁判決が出されました。
 この判決は、妊娠・出産に関わる事情を理由に降格などの不利な影響をもたらす処遇を行うことは原則として認められない旨を明示した点が画期的と言えますが、裁判長が、補足意見の中で更に育児介護休業法10条の法解釈にも触れ、育児や介護を理由とした休業を行う労働者に対しても同様に、復帰後等に不利益な取り扱いをしてはならない、との判断を下した点につき注目すべきです。プライベートと仕事とのバランスを取らなければならない状況は、妊娠・出産を行う女性だけでなく、男女問わず育児や介護を担う労働者全てにあてはまるものです。この判決を受けて、一部では「女性の甘え」「自己責任」という批判も出てきているようですが、そのような批判はやがて自身が休暇や業務軽減の申請を取らざるを得ない状況になった際にかえって自分の首を絞めてしまうことになりかねません。それぞれが互いの状況を尊重して、安心して職場に戻れる体制を作ることが働く人全体の利益に叶うのではないでしょうか。