弁護士 井澤光朗

 
 最近、足利事件の再審請求事件で、再鑑定が実施され、再審開始決定前に、釈放するという事態が生じている。足利事件発生当時、DNA鑑定の確率は500分の1であったものが、現在では9999万分の1まで精度があがっている。それにより、犯行現場に残された痕跡と被告人とは同一人物ではないとの鑑定結果が出て、再審開始決定前に釈放することになったものである。新聞報道によると検察庁はDNA鑑定に使用された痕跡を保存するようにとの指示を出したとのことである。なかには再度の鑑定により、再審事件が足利事件のように起きる可能性は否定できない。科学技術の発達は、これまで、闇の中に埋もれていた事実が浮かび上がる可能性を秘めている。アメリカでも、これまで迷宮入りした事件について、DNA鑑定を駆使して、犯罪捜査の再捜査が行われていたり、DNA鑑定の結果、無罪の判決が多くなっているとの報道もある。

 DNA鑑定については、刑事事件だけでなく、民事事件などでも様相を一変させている。つい10年以上前までは、親子関係の存在、不存在を争われる事件はその確定については、状況証拠を積み上げ判断するという極めて難しい訴訟であったものが、現在では、DNA鑑定により、鑑定結果が出ると訴訟は終了するというところまできている。それでも、DNA鑑定が行われる資料の採取方法など、今後も科学技術の発達に伴い、別の問題が発生する余地はある。

 今回の足利事件では、再審の審理のなかで、東京高裁は再鑑定を実施した。このような新技術の発展に伴い、裁判所も含め再審事件の審理の方法にも少なからず、変化が必要であることを改めて問題提起させられた事案である。

 最後に、DNAは究極の個人情報であることは間違いない。その意味でも、DNA鑑定などについては、個人情報の厳格な取扱いや本人同意など、重要な問題を含んでいる。今後も注目していかなければならない分野である。