[特集 私と憲法]

 
 昨年秋、日弁連の人権擁護大会で、「憲法は、誰のために、何のためにあるか-改憲論議を検証する-」とのテーマでシンポジウムが開催された。そのシンポでの堅い話が終わったあと、憲法24条(家庭生活における個人の尊厳と両性の平等)の原案の起草に関わったベアテさんの生涯についてのドキュメンタリーが放映された。その番組は、高名なピアニストであったベアテさんの父親が演奏したレコードの原盤が岩手の野村胡堂記念館にあることを知り、その記念館をベアテさんが訪ねるところから始まっていた。
 私自身は、その番組を観ながら、改めて郷里の先輩でもあった野村胡堂という人物に思いを巡らせた。野村胡堂は、銭形平次捕物帖の作者として有名であるが、彼の作品は、人殺しの場面がほとんどなく、犯人を捕らえるのにも武器らしい武器を使わない構成で成り立っているという。彼は、また、音楽愛好家としても知られているが、彼の平和思想はどこからきたのだろうかと。
 ベアテさんは、戦後、日本で女性の地位が向上するのに、憲法24条の果たした役割をユーモラスに話された後、日本国憲法を創ったのは「歴史の叡智です。」と結ばれていたのが印象的であった。