[特集 私の趣味]

 
 学生時代は合唱団に所属していました。それも男声合唱団でしたと説明すると、ウヘェと変な顔をされることが多いようです。確かに、男ばかりが集まって楽譜を睨み、怪しい呪文のような声を出している光景は、単に近寄りがたいという以上の何かを醸し出していたでしょう。けれどこの男声合唱というヤツは、先日NHKの有名ドキュメント番組でも取り上げられていましたが、一遍やってみるとやみつきになる曲者で、趣味という範囲を超えて、ものの考え方、人を見る目、人との付き合い方など、少々大げさに言えば人格形成に深く影響するようです。これは音楽そのものが持つ謎めいた力なのかも知れませんが、ろくに楽譜も読めない男共が、お前は声が響いていない、そういうお前は音程が下がっているだのと侃々諤々言い合って、そのくせ演奏会前にはそれなりに格好がついてくる、そんな経験を共有することが「魔力」の正体なのかも知れません。

 文字通り学生時代を謳歌した連中も、その多くは卒業を境に合唱からは遠ざかってしまうのですが、中には歌い続けている者もあって、かくいう私も、司法修習生時代には配属地の第九合唱団に入ったり、弁護士登録後も、時折OB合唱団に顔を出して、何度か演奏会にも出させてもらいました。ここ数年は遠のいていましたが、今年は現役学生の定期演奏会が50回目を迎えるので、久しぶりに練習を積んで、現役・OB合同ステージに混ぜてもらおうと考えています。