
「カスタマーハラスメント防止条例」が各地で制定され始めてから1年余りが経ちました。東京都では令和7年4月に施行され、全国的にも注目を集めました。
東京都の指針では、カスハラ行為の具体例として、「土下座の強要」「名札や顔を撮影しSNSで晒す」「長時間にわたり威圧的な言動を続ける」などが挙げられています。これらは現場で実際に報告された行為に基づくものです。条例や指針は、こうした事案を防止すべき行為として可視化した点に意義があります。
カスハラ防止条例には罰則が設けられていないため、実効性の点で限界があるとの指摘もありますが、企業による防止策の整備は確実に進んでいます。
航空会社大手が共同でカスハラ方針を打ち出すなど、従業員保護の姿勢を明確にする動きがあり、都も中小事業者向けに録音・録画やAI導入を支援する奨励金制度を整備して対策を後押ししています。
一方で、「正当なクレームまで言えなくなるのではないか」という懸念もありますが、顧客が不当な扱いを受けた場合に、正当に不満を伝えることまで制限を受けるわけではなく、カスハラ防止条例においても「この条例の適用に当たっては、顧客等の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」と定められています。
違法な行為(暴行、傷害、脅迫など)はもちろん、違法とまでは言えなくとも、長時間居座る、大きな声を上げるなど、その手段・態様が行き過ぎたものである言動はハラスメントにあたりますが、冷静に改善を求める意見や苦情は、本来企業にとって貴重なフィードバックです。
社会全体が「どこからが行き過ぎか」を共有し、互いに尊重し合う関係を築いていくことこそ、この条例の真の目的といえるでしょう。


