弁護士 斉藤 豊

 ICC(International Criminal Court)は、ニュルンベルグ、東京、旧ユーゴ等、戦争犯罪を裁く特設の国際刑事法廷の考えを進め、常設の国際刑事裁判所として2002年に設立されました。戦争状態においても紛争当事者が守るべき国際法は厳然とあります。ICCはそのルールが無視され、侵害された場合に、違反者を罰する国際的な仕組みです。現実の国際政治の力関係からICCが司法権を行使することには限界がありますが、この枠組みの中で地道に正義を追求する行為こそが、国際社会における法の支配の実現につながると考えられます。
 ICCの所長は赤根智子という日本人法曹(元検事)です。(「戦争犯罪と闘う」中公新書1496 参照)赤根氏は司法研修所34期出身で私と同期の法律家です。赤根氏らICCの裁判官は、ロシアのプーチン大統領、イスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出したことから、現在、ロシアからは指名手配を受け、トランプ米政権から経済制裁の対象とされるという政治的迫害を受けています。
 憲法で戦争放棄を掲げる日本は、ICCに多額の資金を拠出し、財政面、人的側面からICCを支援してきました。国際社会における法の支配を標ぼうするのであれば、今こそ、法を守れ、違反者を許すな、ICCの権威を尊重しろというべきです。ところが、日本政府の対応は何とも及び腰に見えます(昨年10月に高市首相はICCを否定するトランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦した!と報道されています。)。
 力による支配は力による反発を再生産するだけです。明らかな国際法違反の違法行為を前にして、力に頼らない紛争の解決を目指すのは、現状では理想論かもしれません。しかし、私や赤根氏が法曹になったときには、ICCは存在すらしていませんでした。歴史は紆余曲折しますが、少しずつでも進歩している、進歩させなければならないと考えたいものです。