弁護士 渕上 隆

 昨年6月27日、最高裁第三小法廷は、生活保護基準引下げの違法を問う「いのちのとりで裁判」について、保護費減額処分を違法として、これを取り消す判決を言い渡しました。最高裁が厚生労働大臣による生活保護基準の設定・変更を違法としたのは本判決が初めてであり、歴史的判決です。
 2012年、当時野党であった自民党は「生活保護費10%カット」を公約に掲げて総選挙に臨み、政権復帰を果たすと、第二次安倍政権は翌2013年から公約どおり、生活扶助基準引下げを行いました。最高裁はこれを違法と断罪したのです。なお、判決は、国家賠償請求については棄却しましたが、裁判長であった宇賀克也氏は、「『最低限度の生活の需要を満たす』ことができない状態を9年以上にわたり強いられてきたとすれば、財産的損害が賠償されれば足りるから精神的損害は慰謝する必要はないとはいえ(ない)」として、国家賠償請求も認めるべきとする反対意見を付しています。
 本判決を受けて、原告・弁護団は厚生労働省に対して、全生活保護利用者に対する完全な被害回復を求めましたが、厚生労働省は判決で違法とされた引下げ方法とは別の手法で再度基準引下げを行い、裁判をした原告についてのみ追加給付を行うという対応策を公表しました。最高裁判決の意義を矮小化し、被害回復額を「値切る」ものであり、紛争の再燃は必至です。
 生活保護基準は、就学援助の基準や最低賃金など47以上の他の社会保障制度等とも連動しており、生活保護基準の改定は生活保護利用者のみならず、広く一般国民(特に低所得世帯)の生活に影響を及ぼします。引き続き厚生労働省の対応に注視していくことが必要です。