本年6月6日、東京高裁は東京電力福島第一原発事故を巡る株主代表訴訟で、旧経営陣に賠償を命じた一審判決を取り消し、株主側逆転敗訴の判決を言い渡しました。
2022年6月17日に最高裁第二小法廷が原発事故について、「国に責任はない」という判決(6・17最高裁判決)を言い渡して以降、国や東電旧経営陣の責任を否定し、免責する判決が続いており、予想された判決ではありました。
原発事故を巡る一連の訴訟の判決の流れを決定づけた6・17最高裁判決の事案では、東電を顧客とする“巨大法律事務所”の顧問となっていた元最高裁判事が原発事故に対する東電の責任を否定あるいは軽減する趣旨の意見書を最高裁に提出していました。そして、判決を言い渡した当時の最高裁判事4名のうち、検察官出身の判事は国には責任があるという少数意見でしたが、国の責任を否定した残りの3名の判事のうち1名は前記の元最高裁判事が顧問に就任した“巨大法律事務所”の元代表経営者であり、他の1名は東電を顧客とする別の“巨大法律事務所”の出身者であり、残る1名は職業裁判官出身ですが退官後にこれまた東電を顧客とする他の“巨大法律事務所”の顧問に就任しています。ある政治評論家は、「巨人阪神戦で審判が巨人のユニフォームを着ている」と評しています。最高裁は「裁判官は公平であるのは当たり前で、さらに、『公平らしく』あらねばならない」と下級審判事に説いていますが、ここには「公平らしさ」の欠片もありません。
大手マスコミが報じないこうした国、電力会社、巨大法律事務所との癒着という“最高裁の堕落”の実態を詳らかにしたのが、『ルポ 司法崩壊』(後藤秀典・著 地平社)です。多くの人に読まれることを願います。
司法の「公平らしさ」はどこに?
~『ルポ 司法崩壊』を読んで~
カテゴリー:社会の動き