2020年の学術会議会員任命で、時の首相が従来の運用を翻し候補者6名の任命を拒否しました。この理由も明らかにせずに学術会議の在り方の検討がなされ、学術会議を国の特別の機関としていた学術会議法を廃止し、改めて特殊法人として設置する「学術会議法」が、少数与党下に一部野党の賛成で成立しました。
特殊法人化により、会員を首相が任命する従来の制度から総会での選任する制度となって、国からの独立性が強まるかのような報道もあります。しかし、総会選任に向けた会員候補者選定には会員外からなる選定助言委員会による候補者選定方針・候補者選定への意見を聴き、重要な総会議案には会員外からなる運営助言委員会の意見聴取が義務づけられ、首相が会員外から任命する監事が業務監査も行い、同様に首相が会員外から任命する「日本学術会議評価委員会」が学術会議の中期計画や自己評価についての意見を述べるなど幾重にも政府が干渉する仕組みが埋め込まれました。法案審議では「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は、今度の法案で解任できる」旨の説明もありました。
これは、戦前に科学者が動員された反省に立ち、科学者の総意の下に我が国の平和的復興と人類社会の福祉への貢献を期し「独立して職務を行う」として設立された学術会議の独立性・自律性を無力化し、時の政府の意向を忖度する学術会議への変質を強いるものに他なりません。
多くの学術関係者、市民の方々や日弁連・全国52会の過半の弁護士会からの、学問の自由への危惧などに基づく反対の声を退けての立法です。今後の学術会議の帰趨を見守りたいと思います。
