弁護士 加藤 文也

田原俊雄弁護士

 昨年6月30日、当事務所の創立以来のメンバーであった田原俊雄弁護士が亡くなられました(享年95・満93歳)。

 田原先生は、半世紀を超える弁護士人生を、一貫して働く人の権利擁護活動に尽くされました。三河島事件をきっかけに、国鉄労働者、動力車労組の事件を担当するようになり、勤務評定反対闘争にかかる都教組事件でも弁護団の一員として重要な役割を果たされました。

 また、私立学校教職員組合(私教連)、私立大学教職員組合(私大教連)に関わる多くの事件に、晩年まで文字通り第一線で取り組み、多くの優れた成果を上げてきました。

 田原先生のこうした弁護士としての原点は、その波瀾万丈の前半生にありました。先生は、満州で少年時代を過ごし、終戦間際の学徒出陣も経験されました。2年間にわたる過酷なシベリア抑留、引揚げ途上での父親との死別、帰国後の勤労学生としての日々、裁判所事務官の試験に合格するも結核罹患のために断念せざるを得なかったこと。司法試験に合格されたのは結核治癒後のことだそうです。田原先生の、おおらかな雰囲気の中にも、権力によって虐げられる人に寄り添う頑ななまでの姿勢は、こうした体験に裏付けられたものでした。

 田原先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。