弁護士 西岡弘之

 
 ここ数年、とても気になっていたことがありました。皆さんの中にもお感じになった方がいらっしゃるかもしれませんが、「駅の掲示板やビルの外壁から、徐々に時計が消えていく」という現象についてです。

 私は、ずいぶん長い間、腕時計を身につけていません。最近の腕時計がどのようなデザインで、どの程度の重量があるのか知りませんが、私が利用し始めたころの腕時計は、ごついデザインのものが多く、帯も金属製で重量もありました。両腕に付けるならまだしも、片方の手にだけオモリを付けていることに違和感を感じましたし、汗かきのため夏場には汗疹ができることから、できるだけ着用したくないと考えていました。そして、何よりも、街で生活している限り、あちこちに時計が溢れており、食事をしたり、買い物をしたりしているときはもちろん、駅で電車を待っているとき、横断歩道で信号待ちをしているときなど、どんな場面においても、あたりを見渡せば、すぐに時計が見つかり、時刻を知ることができる。そういうわけで、もう何十年も腕時計を持っていませんでした。しかし、ここ数年、時計探しに難航することが少なくありません。

 街から時計が消えた理由について、人に尋ねたり、ネットで検索したりして、調べていましたが、なかなか判明しませんでした。そもそも、街から時計が減っているとは感じないという人もいました。私としては、「私のような考えの者に、腕時計を買わせようという時計会社の陰謀か?」などと穿った推理もしていたのですが、最近やっと本当の理由が分かりました。某時計メーカーの質問コーナーに問い合わせたところ、あっけなく一晩でご回答を頂きました。「お客様からメ-ルを頂いた通り街中の時計が数少なくなっています。携帯電話の普及により、街頭の時計腕時計よりも、携帯電話で時刻を見るようになったために、見せる時計(カラクリ時計)以外は設置しなくなりました。」とのことでした。

 確かに、街から時計が減少し始めたと感じ始めたのは、携帯電話が急速に普及し始めた時期だったような気もしますが、定かではありません。