小学5年生の長男が、自転車で一時停止の交差点を止まらずに走り抜けようとした時に、横断中のご高齢の方に接触し骨折させてしまいました。子供のしたことなので治療費などの負担はさせていただくつもりですが、親の目の届かないところで起きた事故でも親の責任があるのでしょうか。

 

 

 民法712条は、未成年者のうち責任能力(自分の行為によって法的責任が生じることを判断できる能力)のない子供は他人に損害を与えても賠償責任を負わないと定めています。だいたい小学生以下の場合がこれに当たると考えられています。
 この場合、民法714条で、未成年者の監督義務者(多くは親)が賠償責任を負うことになっています。目の届かないところで子供がしたことにも親の責任はあるのです。しかし、これには例外があります。監督義務を怠らなかった場合や監督義務を尽くしても損害発生が不可避であった場合です。被害者からすれば泣き寝入りですが、天災と思って受け入れるしかありません。
 この点について今年4月に注目すべき最高裁判決がありました。小学生が校庭でサッカーの練習中に蹴ったボールが道路に飛び出し、バイクで走行中の80代男性が転倒し骨折してしまった事案でした。地裁、高裁は小学生の両親の責任を認めて賠償を命じましたが、最高裁は、サッカーの練習自体は通常は人に危険が及ぶような行為ではなく、両親も普段から危険なことはしないようにしつけをしていたことなどから、両親の賠償責任を否定したのです。
 ただし、この最高裁判決によって親の監督義務が軽くなったと考えるのは間違いでしょう。特に、ご質問のような道路上での自転車事故の場合、軽微な交通違反でも人に危険を及ぼす可能性があり、親の監督義務は重いと言えます。
 自転車事故は社会問題化しており、6月から施行された改正道路交通法には交通違反を繰り返す自転車利用者に対する講習制度が導入され、取締り強化の必要性も言われています。道路は大人も子供も同じ場所を行き交うものだけに、早くから交通ルールを守ることを身に付けさせる必要があります。自転車の一時停止違反は大人でも多く見かけますが、今年5月には、信号無視の自転車をはねて死亡させた自動車運転者が無罪とされた判決もありました。親が賠償責任を免れるためではなく、お子さんの身を守るためにも大切なことです。