私の父についての相談です。母が亡くなったあとも問題なく一人暮らしを続けていたのですが、最近になり私と話したことを忘れてしまうなど、認知能力に心配なところが出てきました。また、父は現在年金のほか、所有マンションの賃料収入で生活をしているのですが、家賃を頂いたのを忘れてもう一度請求をするということがあったようです。この事について本人に話をしても、そもそもそんなトラブルは起こしていない、との一点張りになってしまいました。幸いその後は同じ問題は起きてはいないようですが、今後万が一のことがあったらと思うととても不安です。
 父の為になにか出来ることはないでしょうか。

 

 

 お父様のご体調のこと、とてもご心配のことと思います。一般的にはご本人が任意にマンション管理についてあなたや他の信頼出来る方に代理権を与える、という方法でも対処は考えられますが、今回のようなご事情ですとそれも難しいようですね。

 お父様の場合、加齢に伴い認知症の症状が出始め、適切な判断が出来なくなりつつあることが想定されます。そのような場合、現行法上、ご本人の判断能力の程度に応じて複数のサポート制度が用意されています。一つは、本人の判断能力が全くないと判断された場合に、日常生活に関する行為を除く全ての法律行為につき、後見人が本人に代わり行い(代理権)、また本人が既に行った行為を取り消す(取消権)事の出来る「後見」という制度があります。

 次に、本人の判断能力が著しく不十分な場合に、一定の重要行為(例:金銭の貸借、不動産等の売買、自宅増改築等)について保佐人の同意を必要とし、既に本人が行った行為を取り消す事ができ、更に特定の行為について保佐人に本人に代わり法律行為を行う代理権を与える「保佐」制度が存在します。最後に、保佐よりも程度が低いが、本人の判断能力が不十分な場合に、「保佐」よりもより特定された範囲の一定の法律行為について補助人となる者に同意権や取消権、代理権を与える制度として「補助」制度というものが存在します。

 お父様の判断能力の程度によりいずれの制度を利用すべきかが異なってきますが、補助制度の利用及び保佐制度において保佐人に代理権を与える場合には、ご本人の同意が必要となります。まずは病院での診断を得た上で、今後どのようにすべきかお父様にもご納得頂けるように良く話をする必要があるでしょう。また、申立の為には診断書の提出のほか、裁判所所定の書面も必要となります。勿論ご自身で申し立てることも可能ですが、手続についてご不明な点がある場合には弁護士に相談をし、場合によっては代わりに申立をしてもらうことも可能です。そのような場合には気軽にご相談頂ければと思います。