[事務所創立50年企画/私と創立50年]

 
 私は、昨年弁護士になって30年目を迎え、事務所でお祝いの会も開いてもらいました。誠に月並みではありますが、30年と言われても、「もう、そんなに経ったのか、あっという間だった」という感慨しかありませんでした。しかし、お祝いの会で話をするためにあらためて30年間を振り返って自分の仕事を整理してみたところ、諸先輩には遠く及ばないものの、それなりにいろいろな事件や仕事にかかわってきたことや、やろうと思って十分できなかったことなどがわかりました。過去を振り返ることは、決して邂逅のためのみではなく、将来の活動の指針とする意味もあることを実感した次第です。

 事務所が50周年を迎えるということは、私が入所したとき事務所は既に20年の歴史を刻んでいたことを意味します。ちょうどその頃は、創立20周年の記念行事を企画しており、当時所属していた弁護士が一人ひとり自らの課題を論文化した単行本『憲法理念の実現をめざして』にまとめる作業をしていました。私は、弁護士になりたてで、扱う事件も少なく、まして論文にまとめられるような課題ももっていなかったため、仕方なく司法研修所教育の裁判教育の問題点などという、今から考えると非常に視野の限定された社会性に乏しい話題でお茶を濁したことを覚えています。

 その後の5分の3の歴史の中で果たして『憲法理念の実現』にどの程度寄与できたか甚だ疑問ではありますが、今同じような企画があれば、さすがにもう少し弁護士らしいことは書けるかもしれません。