結婚して10年になる娘のことですが、夫の暴力が原因で離婚したい、子どもを連れて実家に戻りたい、と言っています。が、娘の夫が怒って実家に押しかけてきた場合、私たちだけで娘や孫を守ることができるか心配です。また、小学校1年生の孫が通学途中などに娘の夫に連れ去られることも考えられます。DV防止法が改正されたそうですが、このような場合に対処できるでしょうか。

 

 

 それはご心配ですね。

 このような配偶者の暴力から被害者を保護するため、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)では、裁判所が加害者に対して被害者への接近禁止や被害者と1緒に住んでいた住居からの退去を命ずる保護命令の制度を定めています。今回の改正で、これまでは被害者である配偶者のみに対象を限定していた接近禁止命令について、子への接近も禁止できるようになりました。ただし、子を連れ戻されるなどして、その子の養育のために被害者が加害配偶者との面会を余儀なくされることを防ぐために必要があること、というのが要件になります。お孫さんについても、そういう事情がある場合には接近禁止命令をとっておくことが有効でしょう。

 娘さんやお孫さんの荷物の持ち出しを安全に行うには、退去命令を活用できます。今回の改正で、これまで退去命令でも接近禁止命令でもカバーされていなかった退去すべき住居付近の徘徊も、退去命令において禁止されることになったので、より安全が確保されることになりました。

 その他、今回の改正で、離婚が成立した後にも元配偶者から暴力を受けるおそれが大きいときは保護命令を求められることになり、退去命令の期間が2週間から2ヶ月に拡大されたうえ、一定の場合に再度の退去命令も認められるようになるなど、被害者保護が拡充されました。

 この改正法は今年12月2日から施行されますので、それまでに娘さんとよく相談してみて下さい。

 それから、状況によっては実家以外の場所に転居することが必要になるかもしれませんが、加害者に転居先を知られたくない場合には、加害者からの住民票等の交付請求を拒否してもらうよう市町村に申し出ることが出来るようになりました(今年7月1日から)。