弁護士 菅沼友子

 昨年から映画館に行くことが増えた。きっかけは「夫婦50割引」というサービスを知ったこと。夫婦のどちらかが50歳以上であれば、通常料金一人1800円のところ1100円で観ることができる(一部やっていない映画館あり)。これくらいの料金であれば途中で眠ってしまっても惜しくない…という訳ではないが、気軽に観に行こうという気分になれる。
 夫婦で鑑賞が条件なので二人の趣味の重なる範囲、ということにはなるが、「シンゴジラ」のようにメジャーなものからミニシアターでしか観られない社会派の映画(難民が押し寄せるイタリア南部の小さな島の日常をとらえたドキュメンタリー「海は燃えている」、巨大グローバル企業の粉ミルクによる乳児死亡事件(パキスタン)を題材にした「汚れたミルク~あるセールスマンの告発」など)まで、結構幅広く楽しんでいる。SF映画には関心がなかったが、紹介記事での評判の高さにつられて観た「メッセージ」も面白かった。地球の各地に突然現れた巨大飛行体に対し、軍に呼ばれた言語学者らが意思疎通を図ろうとするドラマだが、哲学的な問いを投げかけられる深い映画だった。
 あと数年すればシニア割引も利用できるようになり、このマイブームはしばらく続きそうだ。人間に対する洞察力がついて仕事にも役に立つ、などと貧乏性の自分に言い訳をしながら、新聞の映画批評を楽しみに読む今日この頃である。