高齢者世帯や母子世帯に対する生活保護費(高齢加算や母子加算)を削るという、厚生労働大臣の措置の取消しを求める裁判(生存権裁判)は、2005年以来全国の10地裁で取り組まれてきました。

 これまでに東京・広島・福岡・京都の各地裁と東京高裁の計5裁判所では、いずれも原告側敗訴の判決が出され、原告側としては悔しい思いを重ねてきましたが、ここへきて6月14日に福岡高裁で、初めて原告側を勝訴させ、高齢加算廃止措置の取消しを命ずる判決が言渡されて、原告となった高齢者や支援者たちは大変喜んでいます。

 これまで原告側を負かしてきた5判決は、その唯一最大の論拠を、厚生労働省が諮問した生活保護基準等に関する専門委員会が、「老齢加算は廃止の方向で見直すこともやむなし」とする見解(「中間取りまとめ」)を出していることに置いてきました。

 ところが、今般の福岡高裁判決はこの点に関して、専門委員会の審議内容をつぶさに検討すると、委員たちの意見の中には老齢加算や母子加算の廃止について反対意見や慎重意見が少なくなく、「中間取りまとめ」も単純な「加算の見直し」見解ではなくて、(ア)本体の生活扶助基準の充実化を含め、加算廃止によっても高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう措置を検討すること、(イ)加算廃止による高齢者の生活水準の急激な低下を防ぐため、激変緩和の措置を講ずることの二点を提言している。それにもかかわらず、厚生労働大臣がこれらの提言を真摯に受け留め、実行に努めた形跡は見受けられないので、今回の老齢加算廃止措置は「正当な理由」を欠き、違法であると結論したのです。

 この福岡判決に対しては当局側が上告を申立てたので、今後東京高裁判決とともに最高裁で取り組まれることになりますが、私たちも最後の努力を注いで東京高裁判決を「是正」させ、福岡判決を守り抜く覚悟でおります。