TVドラマにも「熟年離婚」が登場するほど、中高年夫婦の離婚が増えています。しかし、特に夫が会社員、妻が専業主婦だった夫婦が離婚した場合、老後の生活を支える年金について、元妻は国民年金の基礎年金しか受け取れないのに、元夫はそれに加えて厚生年金の報酬比例部分や企業年金を受け取ることができる、という非常に大きな開きがありました。そのような問題を解決するために、離婚時に厚生年金等を分割する制度が創設され、本年4月から実施されることとなりました。

 本年4月以降に離婚する夫婦については、離婚の際、婚姻期間中の厚生年金・共済年金の保険料納付記録(夫婦の合計)につき割合を決めて(上限は50%)分割することを当事者間で合意し(公正証書とすることが必要です)、社会保険庁に年金の分割請求を行うことができます。共働きの夫婦でも、例えば育児や家事の負担などのため一方(多くは妻)の収入が少なく、厚生年金額にも差が生ずる場合が少なくありませんが、年金分割の制度は夫婦で合計した保険料納付記録を分割するものですので、そのような場合にも利用できます。事実婚夫婦の場合も、三号被保険者とされていた期間につき、分割請求ができます。年金分割の結果、分割を受けた方は、増えた保険料納付記録に基づいた厚生年金を自分の年金として、自分の年金受給年齢に達した時点で受け取ることが出来ます。分割請求できるのは本年4月以降に離婚した夫婦のみですが、それ以前に納付した記録も婚姻期間中のものは分割対象となります。(図①)ただし、今回の法改正で分割対象となったのは報酬比例部分(いわゆる二階部分)のみで、企業年金等は対象外です。合意ができない場合には、裁判所に決定してもらうことができます。分割請求は離婚から2年以内にする必要があります(財産分与請求と同じ)。

 さらに、2008年4月からは、一方の配偶者がいわゆる三号被保険者である夫婦の離婚につき、一方の請求により、2008年4月以降の婚姻期間の保険料納付記録が自動的に2分の1に分割されることになります。それ以前の婚姻期間の保険料納付記録は自動的に分割にはなりませんが、当事者間の合意または裁判所の決定によって分割することができます。(図②)

 既に、社会保険庁では昨年10月から、配偶者双方の分割対象期間にかかる保険料納付記録等の情報提供を行っています。まだ離婚していない夫婦の場合、情報提供を受けても相手には知らされません。

 いずれにしても、「離婚」は人生の重大事。必要な情報を集めたうえ、じっくり考えることが肝要です。