ブッシュ対ケリーのアメリカ大統領選挙は、接戦の末現職が勝利を納めた。しかしアメリカのイラク侵攻は全く正当理由のない他国に対する侵略であり、現代においても国家権力のおぞましさを教える格好な材料である。誤ったとき権力も含め失敗は失敗と認めるところが、アメリカの民主主義の「健全」なところと思ってきた私にとって、今回程「あほで間抜けなアメリカ人」を如実に見たことはない。「民主主義」は、他国に対する軍隊による「侵略=人殺し」を防止できなかった。しかし気の毒なのはイラクの国民ばかりでない。正に日本国民も、直接影響を受けるのだから、たまったものでない。我々には選挙権もないのにである。アメリカに「日本州」があり、今回の選挙があったらどうなるか。日本の世論調査がでていた。ブッシュ再選を「評価する」が過半数を超え「評価しない」を相当上回っていたのである。我々もあほで間抜けな「日本人」に成り下がっていたのである。しかもアメリカでブッシュを勝たせたのは、ゲイ、ガン等三つの「G」であり倫理的価値観の選挙戦であった(大統領の投票日に同性婚禁止の住民投票が11州で行われ全て承認された)、かかる一見些細な「争点」の大統領選挙だったのである。そしてそれを支えているのが、「宗教(福音主義者)」であるという点についても、考えさせられる。我が国でも政教分離の原則があるのに、政治家は宗教団体と無批判に結合する。しかし宗教の無批判的教義受容は視野を狭くしかつ精神自由をも抹殺し、宗教的感受性のまま政治面に現れるため、多数でももはや「民主主義」とは呼べない。

 今回アメリカ「民主主義」が「戦争・侵略」を防止できないことをブッシュ再選で教えてくれたのである。今ほど憲法の基本原則・特に平和原則を重要視するべき時はないのではないか。それにしても憂鬱である。日本では九条も含め改憲論が華やかで、そして世界は、今後再選のないブッシュによって、自由気ままにかき回される危険な4年間でもあるから。