弁護士 菅沼 友子

 災害(疫病を含む)は万民に平等にやってくる、と言われることがある。確かにイギリス首相もアメリカ(前)大統領もコロナに感染した。しかし、その生活への影響、被害の程度は残酷なほど不平等だ。非正規雇用など不安定な就労形態の人たちは職を失い、親元を離れアルバイトで何とか学生生活を賄っていた学生は退学を考えざるをえなくなり、巣ごもりをする家がなくネットカフェ等でしのいでいた人たちは寝る場所さえ失うなど、文字通り、人間としての最低限度の生活の確保も困難になった。

 そのような場合の最後の砦が「生活保護」。実際、昨年4月には生活保護の申請件数が前年同月比で約25%急増した。しかし、その後は前年実績を下回る状況が続いている(昨年8月までの実績)。国は支援制度の利用が広がったためではないか、と評価しているようであるが、生活保護裁判に関わってきた立場から見ると、水際作戦(申請自体をさせないようにする)がとられているのではないか、この間の保護基準の引下げにより受給のハードルがあがっていることで諦めてしまっているのではないか、あるいは、バッシングの影響等で利用をためらっているのではないか、などと懸念される。国内の自殺者数が昨年7月以降増加していることも生活苦と無関係ではないだろう。

 コロナ禍の長期化が見込まれる中、各種支援策の延長などが検討されているが、やはり「生活保護」の重要性はますます高まると思われる。「朝日訴訟」以来、生存権保障に関わってきた当事務所としても力を尽くしていきたいと思う。