弁護士 渕上 隆

本年10月から、幼稚園や保育所等に通う3歳から5歳の子どもについて、親の所得に関係なく、一律に費用を無償とすることなどを柱とする「幼保無償化」が実施されます。

消費税を10%に引き上げるにあたり、世論の反発を少しでも和らげようとして打ち出された政策です。

しかし、「幼保無償化」の理念自体はよいとしても、優先順位を完全に間違っています。

現在でも認可保育所等の費用は応能負担となっており、低所得世帯では既に実質的に無償化されています。ですので、一律無償化によって高所得世帯ほど恩恵を受けることになります。それどころか、これまで実質的に無償であった給食費が実費負担となることにより、低所得世帯にとってはかえって負担増になったり、自治体の負担が増えたりするおそれもあります。

また、待機児問題が解消されていない状況で、このような政策を実施すれば、新たな「需要の掘り起こし」も起き、待機児問題がますます深刻になります。もともと、日本の保育士配置基準は世界最低レベルといわれていますが、待機児問題解消のために、これをさらに緩和することになれば、本末転倒です。また、保育所が開設されても、保育士が集まらず、開園できないという問題も生じています。今、急務なのは待機児童解消のための保育所の整備と保育士の労働環境と処遇の改善です。

現場の保育士の大多数も、今般の「幼保無償化」には反対しています。

誰のための「幼保無償化」なのでしょうか?