弁護士 加藤文也

 都立高校のA教諭は、自分が担任となった生徒Bさんに不適切なメールを送信したことを理由に、その2年後に突然、懲戒免職処分を受けました。この免職処分は、Bさんの養親が、進学希望のBさんが高校に行くのを止め、強引に携帯電話を取り上げ、都教委に通報したことをきっかけに、都教委の強引な事情聴取に基づいてなされたものでした。

 東京高裁は、A教諭の行為は、校長含め同僚も、家庭環境に恵まれないBさんを親身になって支援し、卒業まで導いたとして評価していた等の証拠を踏まえ、問題となったメールは、養親の虐待を受けていたBさんを励ますためのメールであったことを認め、免職処分は重すぎるとして免職処分を取り消す判決を言い渡し、この判決が確定し、A教諭は早期に念願の職場復帰を果たすことができました。

 Bさんについては、養親の虐待から逃れるようにするため、仲間の弁護士の支援を得て児童相談所に相談した上、シェルターに避難し、親から自立した生活もできるようになりました。

 都教委は、判決確定後、同じメールのことで、A教諭を再度停職6か月の処分に付したため、この間、その処分の取り消しを求めて争ってきました。昨年、東京地裁は、停職処分を取り消す判決を言い渡しましたが、東京高裁は、1審判決を覆し、処分を相当とする判決を言い渡しました。この間、Bさんは、養子縁組を解消し、親の虐待であったことがより明確になり、進学も果たし、自立した大人に立派に成長している事実があるにもかかわらずです。

 A教諭は、現場で、生徒たちのため、仕事をすることを優先し、上記高裁判決をそのまま確定させることにしました。今、子どもに対する虐待が大きな社会問題となっています。A教諭のように、生徒のために真剣に取り組む先生が必要です。A先生、今後も生徒たちのために頑張れ。