弁護士 長谷川 弥生

 本稿執筆現在(2018年11月)、臨時国会で入管法改正が審議されようとしています。人手不足を外国人労働者で補うため、新たな在留資格を作るというもので、経済界の要望を受けて、政府は臨時国会で成立させ今年4月から施行させたいようですが、外国人労働者を支援する団体等は拙速な法改正に反対しています。介護、建築、農業漁業の現場が人手不足にあえいでいることは、共通認識です。しかし、現在示されている法案には人権保障の観点から問題が多く、十分な審議もなく成立させるべきではありません。

 政府は独自の定義に基づき、「家族帯同、永住」でないから移民政策をとるものではないと強弁していますが、最長10年、本国の家族と引き離される可能性があるなど非人道的な内容となっています。法案は「特定・熟練」の一定の場合に家族帯同を認めるとしていますが、対象となる業種など中身は各省庁に白紙委任の状態です。

 技能実習生や留学生の資格外労働など、一部で現代の奴隷といわれる状況を放置したまま都合よく労働力を調達しようとする政権の姿勢に憤りを禁じ得ません。

我々は「労働力」を求めたが、来たのは「人間」だった

 ─ 50年前外国人労働者を受け入れたスイスの状況について同国の作家が述べた言葉です。「外国人」「労働者」という言葉で抽象化すると、一人ひとりが血の通った人間であることが忘れられてしまいます。「労働力」として都合よく使うのではなく、正面から迎え入れ、隣人として共生する道を探すべきでしょう。

 なお外国人を安価な労働力として使うことによる労働条件の切り崩しは現に起きており、問題は日本人労働者にとっても無関係ではありません。