私は、先妻と後妻の子供がおり、主な資産としては私も住んでいるアパートを持っておりますが、住宅ローンも多額に残っており、また若い後妻の生活も考えると、遺言書を書いて誰に何をやって誰にローンを払わせるか明確にしておきたいと思っていますが、問題ないですか。

 

 

 遺言は、法定事項に限りこれをなすことが出来ることになっています。それ以外に書いても法的な効果は生じません。従って自分の気持ち等を長々書くことがよくありますが、これは法的な意味は生じません。あなたの場合、住宅ローンの負担者を遺言で指定できるのかが問題です。

 遺言できる事項には大まかに次のものがあります。

 ①財産処分、これには遺贈等(誰に如何なる権利や物をあげるのか)、財産の拠出、遺言信託、生命保険受取人の指定・変更があり、②相続分の指定・遺産分割方法の指定等、更に③遺言執行者の選任や④遺贈減殺方法の指定等があります。更には⑤子の認知、⑥相続人の廃除等、⑦未成年者の後見人等の指定もあります。

 この中に相続債務の負担は入っていません。そもそも「負債」は、債権者(ローンでは銀行等)がおりますので、この債権者の利害を無視して、債務者が一方的に負担者を指定する「遺言」をしても、効力が生じないことはおわかりでしょう。遺言で、遺言執行者に対し、ある土地を売却してその代金で負債を弁済せよ、という遺言の効力が裁判で争われましたが、「無効」という判決が出ています。

 では、ローンの負債はどのように引継がれるかというと、各相続人全てが法定相続分に応じて当然に債務を負担することになり、債権者は各相続人に、その相続分の割合に従って請求する外ありません。あなたは、このような内容になることを考えて、妻やどの子に何を相続させるのか決めて遺言する外ないと思います。なお「相続放棄」をした相続人は、当然ながら遺産も相続出来ませんが、負債も引継がないことになります。