弁護士 菅沼友子

 前回に引き続き、映画の話から。

 昨年最も感銘を受けた映画の一つが「ドリーム」。原題は“HIDDEN FIGURES”(隠れた人たち)で、1960年代にアメリカがNASAで進めていた有人宇宙飛行計画におけるアフリカ系アメリカ人(いわゆる黒人)の女性数学者たちの奮闘を描いたものだ。女性差別と人種差別による厳しい環境の中、彼女たちは卓越した能力とたゆまぬ努力、そしてしなやかなたくましさをもって成果をあげ、同計画に多大な貢献をした。レベルの違いはあっても、同じような多くの“HIDDEN FIGURES”の努力があって、今の私たちがある。そのような思いを改めて抱き、胸が熱くなった。

 それでも長年の差別によって生じた格差は努力だけではなかなか埋まらない。そのために暫定的な差別解消措置(ポジティブ・アクション)などの工夫がなされている。日弁連も正副会長等の執行部に女性が少ない状態(歴代で女性副会長は12人。女性会長は未だに出ていない。)を変えるため、昨年12月の臨時総会でポジティブ・アクションの導入を決めた。ささやかな取組みではあるが、十年前に同様の措置を提唱した際の反発を考えると、よくここまで来たと思う。国際的にみても男女格差の大きさが指摘されている日本の状況(昨年11月に公表された世界経済フォーラムの報告書では144か国中114位)を変えていく一つのきっかけとなることを期待したい。