弁護士 村山 裕

 憲法施行70周年の今年の憲法記念日、自民党総裁・首相の、2020年施行「改憲」発言で、「改憲」論議が加速されようとしています。9条で3項に自衛隊の定義を加えるのは、1項・2項の骨抜きを目指すものと批判を呼んでいます。併せて、「高等教育」も含む教育を「全ての国民に開かれたもの」にと、「教育の無償化」を挙げて、「改憲」支持基盤の拡大を狙ったとも評されています。

 憲法が無償とする義務教育について、法律は、小中学校の9年を普通教育とし、国公立では授業料を徴収しないとします。しかし、格差社会が広がり、子どもの6~7人に1人が貧困で就学援助(給食や学用品、クラブ活動、修学旅行などの費用援助)を受け、その人数は20年で約2倍に増えています。

 高校や大学は、憲法の「無償」から外れています。しかし、国連社会権規約(13条2項(b)(c))は、無償教育の漸進的導入を義務づけており、我が国は1979年の批准時にこの部分を留保しましたが、民主党政権下の2012年に留保を撤回し、高校や大学の無償化は国際的責務となりました。高校の授業料無償制度もこうして始まりましたが、現政権で一律無償は無駄遣いだと、所得制限が設けられました。大学では、授業料等の高騰で、奨学金受給者が増えていますが、貸与型が9割で給付型への転換が求められています。
 貧困の連鎖を断ち切るのに有効な就学前幼児教育の充実・無償化にも関心が高まっています。

 幼児から大学まで、憲法が保障する教育の機会均等のための「無償化」には、憲法上の障害はありません。「改憲」の課題とするのは、実現先送りの言い訳作りではないかというのは考えすぎでしょうか。