弁護士 加納 力

 今年5月、民法の中の債権法といわれる規定を改正する法案が国会で可決、成立しました。2年前の事務所だよりで改正法案が国会に提出されたことを紹介しましたが、ようやく成立に至りました。今回の法改正は、取引や契約に関するルールの抜本的な改正で、私たちの生活にも密接に関係する問題です。

 債権法に関する民法の規定は、1896(明治29)年の制定以来ほとんど変更されずに今日に至っていますが、120年も経過すると、現在の社会経済情勢とギャップを生じたり、あるべき規定がないために、解釈などによって穴埋めしなければならなくなっていました。例えばインターネットでの商品売買など120年前には想像もできなかったことですから、法改正は必至でした。

 今回の民法改正によって、時代にマッチした新しいルールが定められることとなります。改正項目にはすでにこれまでの判例や実務において確立したルールとなっているものも含まれていますが(例えば、賃貸借契約の敷金返還や現状回復に関するルールなど)、消滅時効期間の統一、事業のための借入れの際の連帯保証の厳格化、定型約款による契約ルールの明文化、法廷利率の引き下げ(年5%→年3%。3年ごとの見直しも)など、新しいルールも定められています。

 施行までには最大3年の周知期間がありますが、120年以上も変わらなかった法律が改正されるということは、実際に法律を扱う裁判官や弁護士にとっても初めてのことになりますから、私たちも改めて勉強していかなければいけません。今後、皆様向けにも、事務所だよりや公式サイトなどを通じて情報発信をしていこうと考えていますので、どうぞご活用ください。