平成24年に改正された労働契約法の眼目の1つは、期間の定めのある労働契約も5年以上更新を繰り返したら、労働者側の意思表示によって期間の定めを外すことができるという制度の導入でした。無期転換権というこの権利は、言うまでもなく契約社員やパート社員といった契約期間の定めのある労働者の労働条件をより安定的にしようとする政策的意図に出たものです。
 ところで、この5年間は、改正法の施行後から数えるとされているため、無期転換権を行使できる6年目の契約の多くは平成30年度に来ることになります。まだ時間があるかと思われるでしょうが、実は、5年目の契約が6年目にも更新され無期転換権を行使できるかは、5年目の契約の内容に大きくかかわっていることに注意して下さい。5年目の契約(年度単位の場合は、平成29年4月から発効)は、通常、前年度(平成28年度)中に締結されますが、無期転換権の発生を止めるために、従来はなかった「今回限り」とか、「更新しない」という条項が入れられる場合が想定されます。このような条項はただちに違法とは言えませんが、改正労働契約法の立法趣旨を潜脱するものとして争う余地があるとされています。しかし、いったん調印してしまうと後で契約書の条文に文句をつけることは容易ではありません。
 長年有期の労働契約を更新してきたが、今回の契約書は何か変だなと思われたら、調印をする前に是非ご相談ください。