「黒澤明は敗戦後、日本人は自我が弱く、はっきりした自己主張をしなかったから権力の言いなりにされて戦争をやってしまった、と考えて、とくに女性が強い自我を持つようにならなければと、『わが青春に悔なし』という戦後第1作の女主人公に原節子を起用し、反戦活動家の妻を演じさせた。それは熱演だった。」(佐藤忠男談-2015年11月27日付 日経新聞朝刊より)。昨年原節子の訃報に接することになったが、私にとっては、「青い山脈」で、戦後の新しい学校制度のもとで、青春を謳歌する若者に接する溌剌とした教師役のなかに、戦後民主主義の輝きとして、印象に残っている。
 昨年(2015年)は、戦後70年、第二次世界大戦終結と新たな世界平和構築システムができてから70年という歴史の節目の年に当たったこともあって、世界中で、この70年の意味を問う種々の催しが開かれた。
 わが国においては、昨年夏、安倍首相が、「戦後レジーム」からの脱却を意図した「戦後70年談話」を発表しようとしていた。これに対し、私たち市民の側から、安倍首相の談話に対峙する「国民の70年談話」が必要との考えが浮上し、実行委員会が組織され、8月13日、東京の弁護士会館クレオにおいて、「国民(私たち市民)の70年談話-日本国憲法の視座から-過去と向き合い未来を語る・安全保障法案の廃案を目指して-」とのテーマで、シンポジウムが開催された。このシンポでは、戦後70年、憲法の精神を生かし、戦争をせず、戦争に荷担もせず、平和を維持してきた市民の力が再認識され、この経験を次の100年につなげる、不断の努力を続けることを誓う「国民(私たち市民)の70年談話―戦後70年を心に刻んで」が採択された。
 本年は、戦後71年目である。平和で、1人ひとりの人権が保障される民主的な社会を創っていくべく、地道に取り組んでいこうと思っている。