今国会で、労働者派遣法の「改正」と、労働時間に関する労働基準法の「改正」が審議されています。どちらも今国会で成立する可能性があります。
 まず労働者派遣法の改正ですが、従来は派遣労働者の受け入れ期間については専門26業務は無制限、その他の業務については3年を上限としていました。しかし今回の法改正では業務による区別を撤廃し、事業所の受け入れ期間を3年を上限としつつ、過半数労働者の意見聴取をすれば、期間無制限に受け入れることが認められるようになります。
 かつては労働者の雇用形態は、直接の雇用契約しか認められず、間接雇用である派遣労働は違法とされていました。しかし労働者派遣法が定められ、例外的に専門的業務等の臨時的・一時的な労働のみに派遣労働が認められることになりました。しかしその後何回かの法改正で、次第に原則と例外とが逆転し、そのため今回の改正は、派遣を固定するものと批判されており、その結果派遣労働の規制は決定的に後退し、正規社員が圧倒的に減少する恐れがあります。
 次に労働基準法の改正ですが、最も問題なのは「ホワイトカラー・エグゼンプション」と言われる、一定の労働者について残業をしても残業代を支払わなくても良いという制度の導入です。提案者は、時間より成果で働く労働者にとって「成果に応じた賃金」が期待できるなどと述べていますが、それが現実になされる保障は全くなく、むしろ長時間のサービス残業が助長される恐れの方が大きいと言えます。
 また適用対象労働者については年収1074万円以上を基本とすると述べていますが、この年収は法律よりも変更が容易な「省令」で決めるので、簡単に切り下げることができます。そこで「省令」の賃金基準の変更で、残業代を支給されない適用労働者が急速に増大する恐れがあります。
 この2つの法律改正は、戦後改革の中で成立した労働者保護立法を根幹から後退させる法律であり、多くの弁護士がその成立を阻止するよう行動しています。皆さんも是非今後の立法動向などに注目して頂きたいと思います。