2015年4月より、公的年金について「マクロ経済スライド」が発動されたことにより、今後物価や賃金が上昇しても、年金額の伸びは抑えられ、目減りすることになります。それだけではなく、政府は、それに先立つ2013年10月から2015年4月までの間に合計2.5%年金額を削減しました。これは、支給水準の目減りではなく、支給金額そのものを減らすというものでした。
 公的年金は、物価・賃金の変動に応じて改定されますが、2000年度から2002年度までの間は、物価等が下落したものの、景気対策のために、年金減額は行われず、前年度の額に据え置かれていました。政府は、その結果、年金支給額は「本来水準」よりも高く、“もらいすぎ”であるとして、年金減額を行ったのです。
 しかし、このように、10年以上も前の措置を理由に、年金の減額が行われたことにより、年金生活者の生活設計は大きく狂わされることになりました。「老後破産」などという言葉が広まるほど高齢者の貧困は社会問題となっていますが、元々低水準であった年金をさらに減額することは、こうした社会問題の解決とは逆行するものです。
 こうした年金減額に対して、年金受給者は、その違憲性、違法性を裁判の場で訴えることとなりました。東京では、5月29日に、原告526人が提訴しましたが、今後、各地でも提訴され、最終的には45都道府県に及び、総計3000人を超える原告数の訴訟になる見込みです。
 年金問題については、とかく財源論が強調され、世代間の争いに問題がすり替えられがちですが、将来年金を受給する世代のためにも、年金制度の在り方を問う裁判にしたいと、原告達は考えています。