アメリカは、オバマ政権になってからも無人機でパキスタンを攻撃している。無人機による攻撃で、死傷した人の数は、既に1000名を超え、その半数以上は全くタリバンとは関係なく、その関係ない死傷者の多くは、女性や子どもたちであるという。パキスタンの人権活動家の努力により、パキスタンの裁判所では、国際法違反との判断が示されたが、アメリカは、被害者に補償を全く行っていないとのことである。
 アメリカは、無人機による攻撃を、本土の兵士がコンピューターを遠隔操作することで行っているが、その兵士の多くが、PTSDに罹患し、深刻な精神障害に苦しんでいるという。そのため、最近では、すべてをコンピューター制御で行う方法の研究が進められおり、それに対して、ロボット研究の専門家から制約を課すべしとの意見がでているという。この問題は、戦争の持つ意味を変質させることに繋がるとともに、人間と技術の関係、ひいては、近代市民革命により獲得された「人間の尊厳」の意味を問うことに繋がっていると思われる。
 ルネッサンス期のフィレンツェのプラトン主義者とされるピコ=デラ=ミランドーラは、スコラ哲学を学び、さらに、ペルシャの宗教、ユダヤの神秘主義にも関心を示した上、すべての諸思想の総合を目指したという。そのピコの「人間の尊厳について」と題する有名な演説草稿が現在に伝えられている。ピコは、その中で、「みずからの自由意志によってすべてになりうることが、人間の尊厳をなす」と主張している。
 昨年、最年少でノーベル平和賞を受賞したマララさんは、その後に受けた世界子ども賞の賞金をすべてガザのパレスチナの学校建設資金に寄付するという。マララさんの勇気と行動、教育のもつ平和に向けた力への信念は、人間の尊厳のもつ意義と、人類の未来に希望を与えるものである。
 また、マララさんの多くの困難をかかえる中での勇気ある継続的行動は、私たち自身に対して平和構築のため地道な努力を続けることの大切さを訴えている。
 本年も、ささやかであっても、その努力を続けていきたいと思う。