静岡地方裁判所から、去る3月27日袴田事件の再審決定が出されました。犯人とされて48年ぶりの決定です。再審請求の争点は多岐にわたりますが、その争点の中の最大は、五点の衣類が袴田さんの犯行時の着衣であったか否かでした。袴田有罪の確定判決では、警察が後から味噌タンクの中から発見されたとして提出した着衣(白ステテコ、白半袖シャツ、ネズミ色スポーツシャツ、鉄紺色ズボン、及び緑色パンツ)は、犯人が犯行時着ていた着衣であると認定していたのです。そして白半袖シャツ右肩部分の付着血液は犯人が犯行時に受傷して付着したものだと認定していました。今回の地裁再審決定では、①二人の鑑定人が、上記右肩部分の血液のDNAは、袴田氏のものではないと一致した鑑定を出し、②更にその他衣類の血痕も袴田・被害者以外の可能性を指摘しました。これを受け裁判所は、味噌タンクに1年以上浸かっていたにしては血痕の色彩が鮮やかすぎ、事件から相当期間過ぎた時期に味噌漬けにされた可能性を指摘し、そして「このような証拠をねつ造する必要と能力を有するのは、おそらく捜査機関(警察)をおいて外にない」と画期的認定をしました。警察等捜査機関は、決定的な証拠が無い事件の場合、何とか被疑者を犯人とすべく誘惑に負け、「証拠ねつ造」にはしるのが多い。警察は被疑者が手の内にあり自由になるため、この誘惑に駆られるのです。私も関わった大森勧銀殺人事件では、犯行時犯人が現場に持って行って銀行員に突きつけたとする短刀が、全く別な事件で別人から警察が押収していたもので、これを証拠として提出していたことが全く偶然に判明した事があります。裁判所には捜査機関が常に証拠ねつ造の誘惑に駆られていることを念頭に厳しいチェックが求められているのです。それにしても近時のDNA鑑定等科学の進歩は、証拠のねつ造の暗闇に光りをあてる結果になっているのは興味深いことです。