福井地裁で大飯原発再稼働差止めの判決が言い渡された5月21日、横浜地裁では厚木基地における自衛隊機の夜間飛行を差し止める判決が言い渡されました。
 軍事基地の爆音被害を訴える裁判は全国に広がり、原告数は3万6000人余りにのぼります。これらの裁判で求めているのは、夜間・早朝の飛行差止めと騒音による様々な被害に対する補償です。過去の判決では、補償請求は認められても、差止請求は斥けられてきました。今回の横浜地裁判決は、これを一歩進めて、自衛隊機について夜10時から翌日朝6時までの間、やむを得ない場合を除いて運航させてはならないという、飛行差止めを命じたのです。
 今まで自衛隊機の飛行差止請求が斥けられてきたのは、民事訴訟手続では扱えないという形式的な理由でした。今回の裁判では民事訴訟とともに行政訴訟も提起されたため、形式的な問題は乗り越えられました。しかし、裁判所が飛行差止めの必要性まで認めたのは、もちろん形式的理由だけではありません。最も重要視されたのは睡眠妨害の点でした。厚木基地周辺の広い範囲で、夜間、健康に対する悪影響が心配されるほどの強度な航空機騒音があり、多くの周辺住民の深刻な睡眠妨害を招いていることから、夜間・早朝の飛行を差し止める必要性が高いとされたのです。
 今、国防や安全保障の必要性、切迫性が声高に言われていますが、全国3万6000人余りの原告と、それを遥かに上回る声なき基地周辺住民の健康や生活を軽んじるようでは正当性が疑われます。今回の横浜地裁判決は、基地被害の救済だけでなく、何かに追い立てられるように軍事優先の道を急ぐ政府の姿勢に釘を刺したものとも言えるでしょう。