地球温暖化対策のための「クールビズ」が流行語になったのは2005年のことでした。今年は逼迫した電力事情の下、なお一層の節電対策が求められています。「スーパークールビズ」や「節電ビズ」などの新語も登場しました。

 軽装で仕事をするのは、節電や温室効果ガス削減のためには結構なことです。そもそも高温多湿の日本の夏にスーツにネクタイなどナンセンス、という意見も頷けます。弁護士業界も夏の軽装は広まりつつあり、以前なら最低限のマナーと考えられていた法廷でのネクタイ姿も、最近は減っているようです。この夏はむしろ軽装がマナーになるのかも知れません。

 しかし、軽装には軽装のマナーもあるでしょう。弁護士が海にでも遊びに行くような格好で法律相談の対応をしていたら、真剣に相談に応じているのか疑問になりますし、派手な柄のシャツで刑事被告人の弁護をしていたら、被害者やその関係者はどう思うでしょうか。

 医者の白衣姿に患者が頼もしさを感じ、山伏の白装束が修験に臨む決意や覚悟を示すように、服装にはメッセージ性があるといいます。快適さだけを求めた自己本位の服装は、対面する人には不誠実に映りかねません。弁護士は不誠実さとは無縁でありたいものです。

 エアコンのない時代、法廷で黒い法服を着ている裁判官が、下は裸足にステテコ姿で、法壇の陰でバケツの氷水に足を入れて涼しい顔をしていたという伝説もありますが、見えないところで涼を取る、それも一つの見識なのかも知れません。