老いと運転
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江戸時代の禅僧、仙厓義梵といえば、「○△□図」や「指月布袋図」などのユルい禅画で有名です。みなさんも、きっとどこかで仙厓の禅画を目にしているのではないかと思います。
仙厓のコレクションで有名な出光美術館の収蔵作品に、「老人六歌仙画賛」というのがあります。どこか暢気な6人の老人の絵に添えられている賛は、こんなものです。
しわがよる ほくろができる 腰曲がる 頭がはげる ひげ白くなる
手は震う 足はよろつく 歯は抜ける 耳は聞こえず 目はうとくなる
身に添うは 頭巾・襟巻・杖・眼鏡・たんぽ・温石・尿瓶・孫の手
聞きたがる 死にともながる 淋しがる 心は曲がる 欲深くなる
くどくなる 気短かになる 愚痴になる 出しゃばりたがる 世話焼きたがる
またしても 同じ話に 子を誉める 達者自慢に 人は嫌がる
仙厓さんの自虐ネタかも知れませんが、考えさせられます。
ところで、最近高齢者による交通事故が頻繁に報じられています。高齢者が事故に巻き込まれるのではなく、高齢者が加害者になってしまった交通事故です。
こうした事故が急に増えたというより、以前からあったのにあまり報道されていなかったのが、急に報道されるようになったのではないかと思います。不幸な事故を防ぐための一種の啓発キャンペーンとして、それで事故が減るならばいいことでしょう。
実年齢と自己認識のギャップは、年齢を重ねるほど広がりやすいと聞いたことがあります。
「オレはまだまだ若い」
「年寄り扱いされたくない」
という意識は、そういうことなのかも知れません。その結果が取り返しのつかない事故に繋がるのだとすれば、運転免許の更新が厳しくなったり、自動車の安全設計が見直されたりする必要もあるのでしょう。でも、
「高齢者に優しくないじゃないか」
「事故を起こしたヤツと一緒にするな」
という声もきっとあるでしょうね。
他方で、昨日、原子力規制委員会が、今月末で運転開始から40年を迎える福井県美浜原発3号機の運転延長を認可したそうです。福島第1原発事故を教訓に原発の運転期間は原則40年とされているのですが、原則がお飾りになってしまっています。
人間と原発を比較しても仕方ないことは承知していますが、高齢者の自動車運転にしても、老朽原発の運転延長にしても、事故が起きたときは取り返しがつかないということだけは共通しています。原子力規制委員会さん、大丈夫ですか、実年齢と自己認識のギャップ。
こんなとき仙厓さんならなんて言うかなあ、と、ふと思いました。
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